Research Projects

視覚野の研究:

哺乳類の大脳皮質視覚野には、眼優位カラムや方位カラムのように表層から深層までを貫くカラム構造からなる機能構築があります。私はこれまで、実験的および理論的観点からこの機能構築を研究してきました。その研究の目的の一つは、発達期の可塑性―すなわち、生まれたときにはある程度確立している機能構築が、動物の視体験によって変化し再編される性質―を理解することです。私は主に、宮下真信氏(沼津工業専門学校)と若林和さん(豊橋技術科学大学)との共同研究によって、方位カラムの活動依存性の自己組織化の理論研究に携わってきました。(図1 and 2).

図1

図1 正常飼育条件 (left), 連続的単一方位視体験 (middle) , 正常視体験への回復(right)を想定したシミュレーションによって形成・再編された方位カラムのパターン

 

図2

図2 連続的に単一方位を視体験させるシミュレーションによって得られた経験方位の過剰表現指数のシミュレーションステップに対してプロットした感受性プロファイル(赤)と単一視体験後に正常視体験をさせるシミュレーションによって得られた感受性プロファイル(青).

方位選択性可塑性の実験研究のために、私は自由に動ける状態で方位を限定した視覚イメージを連続的に視体験できるようにメガネ飼育法を確立し、内因性及び電位感受性色素光学計測の方法とデータ取得法を改善しました。その結果、幼若期のネコ(図3)、ラット、マウスに方位制限メガネを通して連続的な単一方位視体験によって方位カラムが劇的に変化し得ることを見出しました。我々はまた、ネコとマウスに対して方位選択性可塑性の感受性プロファイルを得ることができました(図4).

図3

図3 2週間の連続的な単一方位視体験によって変化したネコ視覚野における方位カラム.

 

図4

図4 単一視体験開始日齢に対する経験方位の過剰表現指数の依存性(方位選択性可塑性の感受性プロファイル、左:ネコ、右:マウス).

こうした方位カラム再編の発見は、方位カラムは眼優位カラムとは異なり視体験に対しては頑健であるという考え方に対する反証です.

最近は、秩序だったマップ構造を持つネコとランダムな分布を呈するげっ歯類における方位表現形成メカニズムの共通性と相違点について研究しています.

Working memory studies:

私は、ワーキングメモリ課題の遂行や順序だった運動の生成に関与する前頭前野、大脳基底核、視床における神経回路のモデル化に従事しています。具体的には、ヒトの1-2-AX 課題遂行を再現するために大脳皮質-基底核-視床ネットワークの数理モデルを構築しました. このモデルでは、線条体におけるmedium spiny neurons において観察されている双安定な静止膜電位を考慮し、基底核内の直接経路と間接経路を取り入れた(図5 and 6).モデルにおける直接経路は、情報保持のための持続性神経活動を再現し、間接経路は保持された情報を消去するために直接経路の神経活動を断ち切る役割をする.また、持続性活動の開始や保持情報の消去は外界からの刺激によってトリガーされるようにモデル化しました.その結果、このモデルは呈示されたシンボルの特定の順序に対して正しく反応することに成功しました.

図5

図5 大脳皮質-基底核-視床ループの基本構造

 

図6

図6 1-2-AX課題遂行のための、基本ループ群からなるワーキングメモリモデル(〇は内部構造を持つ一つのループを表す)